烏日記

日常的な記録や嗜好品

故郷を思う人がいるんだなあと

  就職を機に福島に帰ってきました。烏です。

 新卒の就職活動というのは自分の人生を深く考え熟考する人生の一大イベントでありまして、特に住む場所という点でいうと、地元で就職か、地元近隣の県外に就職するか、進学先に出た土地に就職するか、首都圏で就職するか等ものすごく悩ましい答えのない哲学的な問題に立ちはだかります。どれも正解がないしこれがいいという明確な答えがあるわけでもない、ましてや選択した時点では正解でも、数年後にいろんな意味で後悔するなんてことザラ。こういう自分も一年ぐらい居住地の哲学を行って、自分の出した答えは地元就職だったというそれだけ。

 それでも、住む場所というのは人生を大きく左右すると言っても過言ではないくらい重要な要素であるわけで、その土地に住み続けるために頑張って働いたり、その土地から出たいけどもお金がなくその土地に仕方なく住み続けているという人もいる。

 そういう住む場所の話で、この前に面白い話を聞いた。

 その人は、福島の原発事故の影響で生まれ故郷の港町を離れざる負えない状況に陥ってしまい、今になっても避難先の都市部からかなり離れた里山に住み続けている人である。福島の都市部で働き、娯楽な活動も都市部で行う。しかし、避難先の里山から離れようとしない。都市部に住むほうが便利なのにも関わらず。もちろん理由があって、その里山の地域はその人の故郷である港町にも車で行きやすく、都市部にも車で行きやすいからということであった。自分の生まれ育った港町の風景が定期的に恋しくなることが多く定期的に帰郷するため、生活に便利な都市部よりも不便な里山の地域に未だに住み続けるのだという。

 就職活動というイベントを経て、都市部の便利な生活を上回る故郷の港町に対する思う話は居住地の哲学を行っていた自分にこの話はとても深く心に響いた。生まれた土地からあまり外に出たことのない人間は気づきにくいかもしれないが、日本の自然風景や街並みは共通点があるものの、一つ一つの地域ごとに全く違うものである。植生や地形、土壌の地質が違ったり気候が少し違ったり、その土地に生息する野鳥の種類も全く違うものである。これは私の実体験でもあって、神奈川県中央部の雰囲気は唯一無二であるし、茨城県の港町の雰囲気も唯一無二であるし、私の住んでいる福島の雰囲気も唯一無二だった。どこの地域へ住んでも訪れても代替できない雰囲気であった。

 私も藤沢に4年間住んでいたわけだけど、今も恋しいしいつかは帰りたいという思いが強い。

 ここ最近の中流上流階級の若者の思想で、首都圏就職の流れが強く生まれ育った故郷が軽視されがちな傾向がある。オールドメディアもネットメディアの記事を見ても東京に住むのが日本に生まれた日本人の絶対的な幸せの理想郷かのように吹聴している。しかし、故郷に帰れない人の話を聞いたり、気に入った土地から離れざる負えない状況になった人の気持ちを思うと、その土地唯一の良さに気づき住み続けるというのはどんなに素晴らしいことか考えさせられる。お金以外の素晴らしさや娯楽で満たされない幸せに気づくのって大事だなあと、港町の人の話を聞いて強く思った。

 

ps

個人的見解だけど、唯一無二の地域の良さに惹かれる人間は二重拠点生活がベストだよねと思う。これ以上の最適解は存在しない。まああと全てはお金よねえ。お金がすべて解決する。